IPv6インターネットサービスの選び方徹底解説

プロバイダ

IPv6が脚光を浴びるようになったのはここ数年だと思います。

従来のインターネットの接続方式であるIPv4が混雑による速度低下で夜間ほとんどまともに使えない状態が日常化してからですね。

根本的な解決はNTT東西が混雑の原因になっているNTE(回線側とプロバイダの接点に位置し両者をつないでる装置)を増設すればいいのですが、どうも消極的でなかなか進まない。

そこで日々ユーザーの速度低下のクレームに晒され続けているプロバイダ側が解決策としてIPv6インターネットの採用に大きくシフトしていきました。

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回線事業者ではなくプロバイダの提供サービス

IPv6インターネットサービスはNTTフレッツやドコモ光、ソフトバンク光といった回線事業者側ではなくOCN、@nifty、biglobeといったプロバイダ側が提供するサービスとして理解する必要があります。

もっとも、2015年以降、プロバイダがNTT東西からNTT回線を卸買いしそれを自社サービスとして提供できるようになってから(いわゆる光コラボ)、プロバイダでも回線∔プロバイダをワンセットでユーザーに提供することが増えてきました。OCN光、So-net光、biglobe光などなど。。。沢山あります。

これらの場合は回線側だのプロバイダ側だのと区別してもあまり意味がないのですが、回線とプロバイダを別会社で契約する場合はIPv6インターネットサービスについての問い合わせや調査はプロバイダ側にしないとダメってことです。

ただ、各社のWebページを見てみるとIPv6インターネットを検討しようとしているユーザーにとって必要な情報が十分書かれているとは到底いえません。

それどころかとにかく分かりずらい。“速い、速い”のオンパレードしか書かれていないか、キャッシュバック等のキャンペーンの内容ばかりが目立ち肝心のサービス内容の詳細がほとんど見えてきません。

そこで本稿では自分の利用スタイルに合うIPv6インターネットサービスの選び方について間違いがないように徹底的に解説したいと思います。

1.IPoE方式を選ばなければ意味がない。

IPv6インターネットといっても回線側とプロバイダの接続の方式には①PPPoE方式②IPoE方式の2種類があります。

選ばなければならないのは「IPoE方式」の方です。

理由は目的が速度の改善だからです。

IPv4が速度が遅く、IPv6は速い!と説明されることがありますが、これは間違いです。

IPパケットの転送規格であるIPv4とIPv6の間に速度の違いはありません。

速度に違いが生まれるのは転送の規格ではなく、その規格が採用する接続方式によってです。

回線側とプロバイダ側の接続方式の違いが回線速度の影響します。

いろいろな所で言われているようにPPPoEは非常に混雑するNTEというのを通過する接続方式です。

他方IPoEはNTEは通らず、混雑とは無縁のGWを通過してゆきます。

しかも、PPPoE は通過点が1ギガの太さなのに対してlPoEの場合、10ギガ~100ギガあります。

混雑していない上に、通過点の帯域も10倍広い。

さらに重要な点は今後トラフィックが増加し混雑しそうになった場合でも、プロバイダが自由に回線側との接続点を増やせる点です。

実際に在宅勤務下で高トラフィックによる速度遅延対策として@niftyが2020年早々と増設に踏み切っています。@niftyのニュースリリースはこちら

これまでのIPv4+PPPoEでは混雑が日常化してきてもプロバイダ側は何もできず、NTT東西へ増設の申請が出来るだけでした。NTT東西が増設してくれない限り混雑に対しては何も打つ手がなかったのです。

IPv6ではプロバイダ側が増設をコントロールできるようになったことで、IPv6インターネットサービスがさらなる普及を呼んでもIPv4のように日常的輻輳に陥るおそれはなくなりました。

これがIPoE 方式の速度が速い理由ですが、従来のIPv4にはこのIPoE方式が採用されていないのです。

IPv6はPPPoEだけでなくこのIPoE方式をも採用しているのでIPv4 より速いと言われるだけの事です。

注意が必要なのはIPv6インターネットサービスを提供していても接続方式としてPPPoE方式しか提供していないプロバイダがあるということです。例えばhi-ho(ただし2020/2月時点の情報)はPPPoE方式しか提供していません。

もしあなたのIPv6インターネットサービスがPPPoE方式の場合、IPv4と同じようにNTEを通過しますので速度の改善という面ではあまり効果が期待できません。 

加えてPPPoE方式の場合、別途IPv6トンネリングアダプタが必要になります。

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2.IPv4 over  IPv6に対応していないと実質的には使えない!

次に選ぶときに要チェックなのがIPv4 oer IPv6に対応しているかどうか?未対応だとほとんどのサイトが繋がりません。

IPv6+IPoEのインターネットサービスを契約してもそれで出来る事というのは「IPv6対応のサイトにつながる、IPv6のサイトが見れる」ということだけです。

IPv6サイトだけが速く見れても仕方ありません。

われわれが普段みているyahooやAmazonその他ほとんどのサイトはIPv4サイトなのです。 これらには全くIPv6+IPoEサービスではつなぐことは出来ません。

IPv6とIPv4は相互に互換性がないからです。

今まで通りIPv4のサイトも見るためには、やはりIPv4対策をしておかなければならないのが本来です。

かと言って今までと同じようにルーターにPPPoEの設定をして使うのであれば、速度改善のためにIPv6+IPoEサービスを導入する意味がありません。

そこで必要になるのが IPv4 over IPv6 という仕組みです。

これはIPv6通信のなかにIPv4のパケットも流せるようにした技術で、まだまだ世界中のサイトのほとんどがIPv4サイトである現時点では必須の技術です。

今まで通りすべてのサイトを見るためには、提供サービスがこのIPv4 over IPv6に対応していることが大前提です

ちなみに我々が普通にネット利用するときに見ているサイトでIPv6に対応しているサイトといえば、youtubeNetflixなどの動画配信サービス、Googleのトップ画面検索結果ページくらいです。これだけで十分! これくらいしかネット見ないし、これが速くなるのであればそれ以外は何もイラン!という人には IPv4 over IPv6 は必要ありません。

現在、提供されているIPv6+IPoEサービスで実際に使われているIPv4 over IPv6は技術仕様的に次の3種類です。

  1. MAP-E
  2. DS-lite
  3. 4rd/SAM

1のMAP-Eは日本ネットワークイネイブラー社(以下JPNE)が「V6プラス」というサービス名で提供しているIPv6+IPoEサービスで利用されているもので、多くのプロバイダもJPNEと契約してこの「V6プラス」を使わせてもらっています。

2のDS-liteインターネットマルチフィード社(以下、M-Feed)が「トランジクス」というサービス名で提供しているIPv6+IPoEサービスで利用されているものです。これもいくつかのプロバイダがM-Feed社と契約して「トランジクスサービス」を使わせてもらっています。

3の4rd/SAMというのはBBIX社の採用する技術で、現在のところソフトバンク社のみ「IPv6高速ハイブリッド」というサービス名で利用しています。

v6プラス、トランジクス以外のものもある

OCNはv6プラスでもトランジクスでもなく「OCNバーチャルコネクト」というサービスを提供しています。 名前こそ独自ですが技術的にはMAP−E方式と考えて間違いありません。

同じくbiglobe「v6オプション」というサービスもbiglobe独自のものですが、OCNバーチャルコネクトと同じで技術的にはMAP−E方式です。

3.IPv4 over IPv6の方式によっては利用で出来なくなる事があることに注意!

インターネットの速度改善のために今のところ最も有効なIPv6インターネットサービスですが、採用しているIPv4 over IPv6の方式によっては、IPv6に変えてから急に使えなくなってしまうものが出てきます。

Webページ閲覧や動画視聴など一般的なインターネットの利用についてはどの方式でも差がなくどれでも速度改善の効果があります。

問題は以下に示すような使い方をしている、もしくはこれからしようと考えている場合です。

あなたがこれから列挙する項目のどれもする予定がないならこの項は読み飛ばしてもOKです。

  1. 自宅Webカメラの映像を外出先でもスマホ等で確認したい。
  2. 自宅にサーバーを構築し公開したい。
  3. オンラインゲームのマルチプレーでホストになる。

基本的にこれらの使い方は全く出来なかったり、出来るとしても制限的だったりまたは高度な技術が必要だったりします。

これらはすべてあなたのルーターでの「ポート開放」という設定を要求される使い方です。

ポート開放はIPv4を前提としています。

DS−liteの場合

まず、IPv4 over IPv6の方式のうちDs−liteを採用するIPv6インターネットサービスでは「ポート開放」は全く不可能です。

グローバルIPv4アドレスをプライベートIPv4アドレスに変換するいわゆるNATがプロバイダ側の機器で行われるからです。

ポート開放の設定が必要とされる場合でも、自分の決めた任意のポートで開放してもいいという場合と、「◯◯◯◯番」でポート開放して下さい、というように特定のポートでの開放を要求される場合がありますが、Ds−lite方式ではいずれも出来ません。

Ds−liteを使う場合にはポート開放が出来ないことから結局、 IPv4 over IPv6 対応ルーター(これは必須)の配下にもう1台ルーターを準備してそこにIPv4のPPPoEの設定をしここでポートを開けるというやり方くらいしかありません。

これではオンラインゲームなどで速度の改善のためにIPv6インターネットサービスを導入したという人は意味がありません。

ネット閲覧は速くなったけれど肝心のオンラインゲームは旧来のIPv4のままなのですから。

もっともルーターが対応していればいわゆるNAT越えのテクニック(例えばUDPホールパンチング)で利用できるものもあるので、導入前には利用ルーターメーカーやゲームデベロッパー、Webカメラメーカーなどに確認するのが賢明です。

Map−Eの場合

Map−EではNATがユーザーのルーターで行われるので原理的にポート開放はできます。

ただし、IPv4の場合と違いかなり制限されます。

開放出来るポートがユーザー毎に違います。

ユーザーは自分に割り当てられたポート(240個だけ)についてはポート開放できますが、それ以外のポート番号はいじることすら出来ません。

何番から何番のポート番号が自分に割り当てられるかは予めわかりません。

ポート番号は割当てられたIPv6アドレスから自動的に導き出されるものだからです。

つまり契約して実際にIPv6アドレスの割当てが来ないと自分には自由に使えるポートが何番なのか分からないということです。 契約前に分かることはそれが240個あるということだけなのです。

契約後にMAP−E対応ルーターの設定画面から自分が自由に開放できるポート番号が初めて確認出来ます。

ですから任意のポート番号で開放すればいいのであれば、自分が自由にできるポート番号の中から好きな番号を選んでポート開放すれば使えることになります。

ですが、このゲームでは、「◯◯◯番」でポート開放して下さい。だとか、このWebカメラではカメラ指定のポート番号で開放して下さい、とか説明書に書かれていたら、その特定の番号が自分の自由にできる割当てポートになければポート開放は諦めるしかありません。

このような場合はやはりDs−liteの場合と同じようにもう1台IPv4のPPPoE方式の接続を作りそこでポートを開けるしかありません。

4rd/SAMの場合

ソフトバンクのIPv6高速ハイブリッドサービスではIPv6+IPoEではあってもIPv4と全く同じようにポート開放が出来るので特別問題はありません。

Ds−liteやMAP−EがグローバルIPv4アドレスを複数ユーザーと共有することを前提とした技術であるのに対し(だからこそポート開放をさせない=Ds−liteの場合、あるいはさせるとしても自由にはさせない=MAP-Eの場合)、4rd/SAMの場合はIPv4と同じく、グローバルIPv4アドレスは個々のユーザーに割当てる前提の技術だからです。

グローバルIPv4アドレスを潤沢に持っているソフトバンクだからこそ実現できる話でしょう。

ただし、利用にはBBユニットというソフトバンク指定のルーターのレンタルが必須になっています。

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4.専用のルーターを新たに準備する必要はあるか?

基本的にIPv6インターネットサービスを使う場合には専用のルーターが必要になります。

プロバイダから指定ルーターのレンタルが義務付けられる場合もあれば(大抵有料)、自分で対応ルーターを購入準備するもよし、レンタルを利用するもよしという扱いのプロバイダもあります。

市販品ではBuffaloはじめNEC、エレコム、IOデータなど主たるメーカーからIPv6インターネット用の専用ルーターがここ近年多数販売されるようになったので準備に困ることはありません。

v6プラス対応ルーターというのはMAP−E方式対応ルーターのことですし、トランジクス対応ルーターというのはDS−lite方式対応ルーターのことです。 

なお、最近のルーターの設定画面に「v6オプション」や「バーチャルコネクト」の表記があるものも出てきました。

NTT東西が提供するひかり電話ルーターがあれば専用ルーターは不要になる場合あり

NTTのひかり電話対応ホームゲートウェイルーター(HGW)があれば、別途専用のルーターが不要の場合があります。

提供プロバイダがNTT東西とフレッツジョイント契約を結んでいる場合です。

フレッツジョイントというのはプロバイダとNTTとの間で交わされる契約でユーザーは関わりありません。

前項でも説明したとおりIPv6インターネットサービスで IPv4 over IPv6 を利用する場合どのような方式でも専用の対応ルーターが必要です。

NTTの光電話ルーター(HGW,ホームゲートウェイ)は本来は IPv4 over IPv6 対応のルーターではありません。

このHGWにアプリケーションをバンドル(ダウンロードさせて適合させる)ことで対応ルーターとして変身させれば、別途専用ルーターを追加準備する必要はなくなります。

NTTのHGWルーターがMAP-E方式やDS-lite方式に適合するように、 IPv4 over IPv6 を提供するプロバイダが 独自のプログラムをアプリケーションとしてNTTに預けておく契約がフレッツジョイントというものです。

NTTとフレッツジョイントを締結しているプロバイダのサービスであればNTTのHGWがある場合それを IPv4 over IPv6 対応ルーターとして利用できるので別途専用ルーターを準備する必要はありません。

この場合光電話の契約自体はなくてもOKです。(HGWは光電話の契約者にもれなく提供される機器ですが、光電話を契約しなくても機器のみレンタルとして利用することもできる)。

フレッツジョイントは永らくMAP-Eではない方式には対応していませんでした。ですのでDs−lite方式を使う場合はHGWがあっても、それとは別にさらにDs−lite対応の専用ルーターを準備する必要がありましたが、つい最近NTT東西はDS-liteにも対応できるようにしたことを発表しました。(NTTニュースリリース

ただしHGWに機種によってはハッキリしない部分があります。(300系、400系は非対応?)

MAP−Eに技術的に似ているOCNバーチャルコネクトやbiglobeのv6オプションならOKのはずですが、OCNはNTT東西とフレッツジョイント契約をしていないのでやはりHGWだけではダメで別途バーチャルコネクト対応の専用ルーターの必要となります(OCNからレンタルされている)。 

Biglobeはフレッツジョイント契約ありなので、HGWだけでもOKとなっています。

HGWはモデムとルーターが一体になったPR系と別個になったRT系とありますがどちらでもOKです。

また回線もVDSL方式のマンションタイプでもOKです。

5.ポート開放が必要とされる使い方をするかどうかが鍵!

結局、あなたの自宅のPCやカメラに外部からのアクセスを許す使い方をするのであれば、絶対にポート開放が必要になる以上、安全かつ確実にやるならIPv4と同じようにポート開放が出来る、4rd/SAM 方式しかないことになります。

つまりソフトバンクのIPv6高速ハイブリッド一択という事になります。

ポート開放しなければならない様な使い方とは無縁だというなら、MAP−Eでも、Ds−liteでも同じです。

ただ、ひかり電話も契約しているのであればNTTのHGWがあるわけですから、MAP−Eを選べばプロバイダによっては新たにIPv6用に専用のルーターを準備する必要もないので今の自宅のシステムのままで速度の速いIPv6インターネットが実現することになります。

プロバイダ各社と提供サービス一覧

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