マンションで光回線サービスを契約したいけど、部屋まで光ケーブルが来ていない! 調べてもらったら配線が不可能だった。。。
こんな場合は部屋まで光ケーブル1本で!というのは諦めるしかないけれどマンションに既設の電話用の配線を使って部屋まで配線するVDSLという方法を使うことになります。
電話用の配線というのはメタル線つまり銅線であって光ファイバーではありません。 でもマンションの共用部までは光ファイバーで来ているのでVDSL方式もかろうじて「光回線サービス」の仲間に入っています。
でも、各部屋まで光ファーバー1本で来ている「光配線方式」が文句なしの光回線サービスであるのに対してこのVDSL方式はどうも今一つ人気がない。
1. VDSL方式はなぜ嫌われる?
VDSL方式が今一つ人気がない理由はVDSL方式は光回線をマンションの他の住人達と共有するので光配線方式よりも速度が遅くなる!と説明されていることが原因のだと思う。
たしかにVDSL区間の速度は、下り上りとも100Mbpsです。(ただ、auひかりマンションGタイプは200Mbps)
これに対して一般的な「光配線方式」だと1Gbpsですよね。
しかもVDSL 方式はマンションの他の住人たちと共有の回線だという。
これではどうあってもVDSL方式は光配線方式よりも一段も二段も劣るサービスのように見えてきてしまいます。
しかしこれは明らかに間違いです。特にインターネットの利用に関していえばVDSL方式と光配線方式で実質的に変わりがありません。それどころかVDSL方式の方が有利であるとさえいえます。
「光回線の共有」ということが”VDSL方式=速度遅い”と言われる主な理由だとすれば今一度「光回線の共有」の意味をしっかりと整理しておかなければなりません。
2.マンション住人と光回線を共有するとは一体どういう事なのか?
なかなかここは誤解が多いところです。「共有」だということと100Mbpsだということの関係というかその辺のところがわかりづらいのです。
例えば、全戸50戸のマンションに住んでいるとして、マンション住人の全員がVDSLマンションタイプの光回線サービスを契約しているとしましょう。
各住人がそれぞれ契約しているのが100Mbps回線なのだから、50戸全部屋に100Mbpsを届けるのならマンション自体には100×50で5000Mbpsの光が来ているということなのか? 5000Mbpsといえばつまり5Gということです。
残念ながら5ギガは来ていません。マンションに来ている光回線は1Gです。
戸建て用のファミリータイプや光配線方式のマンションタイプと同じで変わりがありません。
この1Gを共有することになります。
ということになると1G、つまり1000Mbpsを50ユーザーで分けるってことなのか?
もしそうなら1000Mbps÷50で1ユーザーあたり20Mbpsになるって事?
なら100Mbpsの光回線サービスってちょっと誇大広告に過ぎないか?
ますます、解らない。。。
結論から先にいうと、VDSL方式では、1Gの光回線を最大32部屋(通常は16部屋)で共有するというのが正解。
これは、50戸のマンションでも、100戸のマンションでも同じで、いくら部屋数が多いマンションになろうともVDSLで共有するのは最大でも32部屋でそれ以上の部屋との共有になることはありません。
VDSL方式では光回線を集合装置で16分岐する
共有部分に引き込まれた光ケーブル区間(1Gbps)はONUという光のモデムで終点になります。そしてその後ろにVDSL集合装置が繋がれます。VDSL集合装置は1台で16部屋分に回線を分岐して、マンションのメタル構内配線に信号を流して行きます。。
ですから、通常は共有は16部屋までです。
ただし、VDSL集合装置は2台までONUに接続することが出来るので、例外的に2台カスケード(直列)接続される場合は1Gの光回線は16×2で32部屋分に分岐されることになります。 これが最大です。それ以上の人との共有はありません。
それ以上のユーザーについては新たにもう1本光ケーブルが引込まれ、そこに新たなVDSL集合装置が繋がれてそこにぶら下がることになります。
大規模なマンションでは光ケーブルも何本もまとめて引き込まれ、そこに複数台のVDSL装置が繋がれます。 こんな風最低限の分岐に抑えることで一部屋あたりに届けられる帯域(速度)が細らないようにしてあり、決して大人数で1G を分け合うわけではありません。
VDSL方式では60Mbps~100Mbpsが確保される
以上の点からほぼ見えて来た感がありますが、ここであらためて、“光回線をマンション住人で共有する”と説明されるVDSL方式の「共有する」という点を整理しておきます。
マンションに光ケーブルが1本だけ引きこまれていて、VDSL集合装置も1台だけ。全戸で16ユーザーのみとして考えて行きます。
この16ユーザー全員が同じ時間帯にインターネットを利用していたとしたら、1Gの帯域を16ユーザー全員が平等に使うことになるので1ユーザーあたり62.5Mbps程度の速度となります。(1Gbps÷16=62.5)
もしあなた以外誰一人として通信していなければ、つまり使っていなければ、あなたは1Gbpsを独占出きるはずですね。
光回線を共有するというのはこういう事なのです。
ただ、VDSL方式では伝送速度の限界が下り上りとも100Mbpsですので、結局誰も使っていないあなたの独占状況でも通信速度は100Mbps止まりだという事になります。
このように他のユーザーと回線を共有する以上、他ユーザーの利用状況によって確保される回線速度が速くなったり遅くなったりするサービスはベストエフォート型と呼ばれてばれ帯域(=速度)保証型と区別されています。
3.光配線方式だって最大32分岐されていることを忘れてはいけない!
実は光配線方式も1Gbpsを最大32ユーザーで共有しているのです。
これは光配線方式のマンションタイプだけでなく一戸建てのファミリータイプでも同じなのです。
1Gbpsの光ファイバーが自宅まで来ているのに共有というのがイメージしにくいと思います。
ファミリータイプの場合はNTT収容局内で1Gがまず4分岐スプリッタで4つに分けられています。4分岐された光はそれぞれのエリアに届いたあと電柱のところにあるクロージャーにある8分岐スプリッターで8つに分けられてそれが各家庭に引き込まれているのです。
4×8で32ユーザーで1Gを共有しているのはVDSL 方式と同じです。むしろVDSLの場合は通常は16分岐なのでVDSLの方が有利な場合すらあるわけです。
光配線方式のマンションタイプも同様ですが、最初の4分岐されるのがファミリータイプと同じようにNTT局内で行われる場合と、マンション共用部で行われる場合があります。
いずれにしても光配線方式が1GbpsでVDSL方式が100Mbpsだといっても他人との共有である以上は理屈は同じです。
結局は何人との共有かが問題なのであって、方式が光配線かVDSLかは問題ではないってことです。
他にユーザーがいなくて誰とも共有していないとか、共有しているけれど他の誰一人として使っていないという少々ありえない場合でなければ実質的な差異はありません。
あなた以外誰もインターネット使っていないという場合なら。1ユーザーの独占状態になります。
この時に光配線なら1GbpsだけれどVDSL方式ならメタル線の伝送速度の限界の100Mbps止まりだという差です。
1Gか100Mbpsかは無視できる差ではありませんか?
筆者には近くのコンビニに行くのに986馬力のフェラーリがいいか?105馬力のホンダフィットとどっちがいいか?と言っているのと同じに見えます。
インターネットの利用に関していえば30Mbps~50Mbps以上は全く不要な帯域だからです。この点詳しくは「回線速度が30Mbpsならページは何秒で表示されるか? 快適に使うために必要な通信速度の真実」で解説しています。
4.他社VDSLへの乗換えで回線性能はアップするか?
あなたの住んでいるマンションに複数の会社のVDSLサービスが提供されている場合、今使っているVDSLが気に入らないから他社への乗り換えを検討したいと考える人もいるかも知れません。
しかし、気に入らない理由が料金やサービス内容ではなく、もっぱら回線の安定性や通信速度が不満だからというのなら他社に乗り換えてもあまり意味がありません。
なぜかというと、
VDSL回線の性能はマンション設備の性能によるところ、もっとハッキリ言えばマンション構内の電話用メタル配線が古いとか、MDF(主配電盤)、IDF(中継配電盤)、部屋内のモジュラージャック(電話線の差し込み口のこと)が年季が入っていて性能が落ちているとかによるところが多いのです。
マンション設備の問題はマンションのオーナーや管理会社で何とかしてもらうべき話で、回線提供事業者側では何も出来ません。
どんなに高性能なVDSL集合装置や宅内モデムを準備しても伝送経路の性能以上の性能は引出せません。
回線提供側は「私共はマンション様の設備を借りてそこに信号を流させてもらっているだけですので、設備に関しては、管理会社もしくはマンションオーナー様に相談して下さい。」と言うだけです。
(NTTのような回線提供事業者が出来ることは限られていて、マンションへの光引込み線、共用部に置かれるVDSL集合装置、宅内用にレンタルされるVDSLモデムなどの不具合や劣化がある場合の故障修理や交換だけです。)
このように今使っているVDSLが気に入らないからといって他社サービスに乗り換えても同じマンションで使う限りは回線の性能面ではほとんど変わりがないということです。
ちなみにNTT回線を使った光コラボでは契約先をあれこれ変えても、すべてNTTのフレッツサービスそのものを使っているわけですからVDSL区間だけでなくマンションまでの光回線区間についても中身は全く何も変わりません。NTTのフレッツからドコモ光やソフトバンク光に変えてもアクセス回線はフレッツ回線そのもので何も変わっていません。
5.VDSL方式から光配線方式への変更は可能か?
マンション構内に光ケーブルを通せる配管がある場合は、マンションのオーナーや管理組合のOKがあれば可能です。
共有スペースなどマンション側の設備に変更を加える工事が発生しますし、他のマンション住人が利用できるサービス内容も変変わってくる話なので、マンションオーナーはもちろん、管理組合や自治会などのOKを取り付ける必要があります。
オーナーや他の住人が反対すれば光配線化は不可能ですが、この点のOKさえあれば、配管がある以上光配線化に障害はありません。
配管があってそれが利用可能な場合はマンション側に発生する工事費用もわずかで済むのでオーナーや管理組合もOK出しやすいでしょう。
あとはNTT側でどれくらいの契約が見込めるかを判断して提供タイプが決まり(ミニ、タイプ1、タイプ2)提供が開始されます。
NTTの案内では最低4契約以上が見込めない場合は提供不可となってはいますが、将来的な見通しも含めての基準なので今すぐに4契約取れなくても開通はしてくれるはずです。
開通がOKとなれば契約者は開通工事費用として15000円の出費で光配線方式によるマンションタイプで切り替わる事になります。
問題は、光ケーブルを通せる配管がそもそもなかったり、あってもギッシギシに詰まっていて余裕がない場合です。
新たな配管の敷設工事から必要となります。配管工事はあくまで、マンション側の設備の問題ですからマンション側(オーナーもしくは管理会社)が費用を出して配管を準備出来ない限りNTTは光配線化の工事は受け付けてくれません。
光配線の必要性を感じて、巨額の費用がかかる配管敷設工事についても快くOKしてくれるオーナーや管理会社でない限り無理でしょう。
ただし、インターネットの利用に限定していえば(ってか、それ以外個人では回線利用することはないと思いますが。。。)、VDSL方式と光配線方式で回線性能の違いがどれほどあるか?といえば殆どないというのが事実です。特に回線速度については全く同じか場合によってはVDSL方式で利用しているユーザーの方が有利だったりするケースも多く見られます。
この点誤った知識にもとづく情報(VDSL方式は光配線より速度が出ない)があまりにも多いのが残念です。
いずれにしても筆者としては“労多くて益少ない”VDSL方式から光配線方式への変更は全く無駄だと考えています。
コメント
[…] *VDSL方式のしくみについては「光回線マンションVDSL方式を徹底理解する」で詳しく解説しています。 […]
「VDSL方式と光配線方式で回線性能の違いがどれほどあるか?といえば殆どないというのが事実です」を拝見しました。
別荘マンションのインターネット回線の問題で、VDSL方式を有力候補として検討を始めた所で、貴資料に出会えて、感激しています。
自宅でも、銅線に魅力を抱き、光を引いていません。
銅線の方が、私にとっては早いと感じています。
インターネット依存症である私にとっては、上り回線のレイテンシーが
一番の関心事で、画像をダウンロードしたりしない、自分にとっては
下り回線のスピードなど、気にならない。
(pdfをダウンロードした時には、トイレに行くようにしている
:それほど、普段はキーボードをたたく事に熱中している)
ちなみに、自宅の上り回線は、接続しっぱなしの960kbps。
光のように最大32のユーザーの順番待ち行列に並ぶ必要が無い。
思いつたら、即、サーバーに命令が届く、そこからは、サーバーの空き具合が問題。下り回線は、たったの960kbpsだが、これで、相手のサーバーが作業を終えるまでの待ち時間がサーバーによって、酷く差がある事が判断できる。(下り回線960kbpsは十分早い)
もしも、下りがやたらに早く、一瞬で、大量のデータを送られても、こちらは、読み取れない。
欲しいのは、「ハイ、少々お持ちください」と言う、即答であって、
テープを高速に回したかの様な「早口のおしゃべり」では無い。
つまり、レイテンシーが重要と言うのが現実の世界(アナログの世界)。
>>欲しいのは、「ハイ、少々お持ちください」と言う、即答であって、
テープを高速に回したかの様な「早口のおしゃべり」では無い。
いやぁ~何とも上手い表現ですね。
まさにその通りですね。